【事例】マーケティング人材育成・組織構築で実現した、ミツカンの持続的成長戦略

企業を取り巻く環境が急速に変化する中、即効性のある成果と、持続的な組織力の向上という、2つの課題の同時解決が求められています。そういった理由から、 短期的な成果だけでなく、中長期的な競争力を高めるため、マーケティング人材と組織の強化が重要課題となっています。

こうした課題に対し、マーケティング組織の強化を目指すミツカン(株式会社Mizkan)が導入したのが、Bloom&Co.のブランドマーケティング戦略人材・組織強化プログラム「ブランドマーケティングコーチ」です。このプログラムを通じて、すでにシェアNo.1を誇る「味ぽん」の売上を、値上げにもかかわらず、さらに10%アップするなど、即時的な成果を上げています。

Bloom&Co.の「ブランドマーケティングコーチ」は、短期的な売上成長と、中長期的な売上成長のためにマーケティング人材の育成・組織力強化を実現するプログラムです。プログラムの特徴は、実際のビジネスを題材に、成果創出と人材育成、さらに組織構築までを同時に進める点にあります。

今回のミツカンの事例では、「味ぽん」を題材に選定。Bloom&Co.のメンバーが、ブランド戦略の幹になるUAV(顧客に選ばれ続ける価値)の開発からコミュニケーション戦略の立案・実行まで、一貫して伴走支援とコーチングを行いました。この過程で、参加者は実践を通じてマーケティングノウハウを習得。同時に、UAVという共通言語を軸に部門を越えた協働の仕組みが強化され、組織全体のマーケティング力が向上しました。

短期的な事業の成果だけではなく、中長期的な人材育成、組織構築。この3つの価値を同時に実現できることが、本プログラムならではの強みです。

今回はそのプロジェクトを率いた、ミツカン取締役 マーケティング本部 本部長 槇 亮次氏と、Bloom&Co.代表の彌野 泰弘が、これから求められるマーケティング人材・組織や、その強化に向けたポイントについて語り合いました。

彌野:近年、多くの企業から「自社でブランドマーケティングを実践できる人材を育てたい」というご相談をいただいています。ミツカンとの取り組みは、そうしたニーズに応える新しいプログラムでした。

槇:当社のマーケティング部門は、商品開発を担う技術系チームとブランドマーケティングを担当する企画系チームの2つを中心に構成され、約170~180名が在籍しています。商品開発から広告宣伝まで、マーケティング活動を一気通貫で行える体制が整っている一方、大所帯ゆえに進め方や考え方が個々に異なる状況がありました。

自社のマーケティングを次のレベルに引き上げるためには、戦略面の強化に加え、一定の“型”の導入が必要だと判断。マーケティング戦略と人材・仕組みの強化、その両方に取り組むことを決めた際、相談相手として真っ先に思い浮かんだのが彌野さんでした。

経験豊富でマーケティングを熟知する皆さんにならば、戦略強化、そして顧客志向のマーケティングを社内に根付かせるサポートを安心して任せられると思ったのです。

彌野:23年6月から、約80名のマーケティング担当者を対象に「ブランドマーケティングコーチ」をスタートしました。このブランドマーケティング人材育成・組織構築プログラムの特徴は、実在する商品を題材に、実践を通じて学ぶ点にあります。

ミツカンでは「味ぽん」を題材に選び、顧客インサイト理解からUAV開発、そしてブランド戦略からコミュニケーション戦略立案まで、段階的に体験を通して学べる育成プログラムを展開しました。P&G出身のメンバーが伴走しながら、理論と実践を通じて「わかる」から「できる」へと導いていきます。

私たちが大切にしているのは、特定の人材だけでなく、組織全体のマーケティング力を高めることです。そのため、プログラムは個人の育成と組織への定着を同時に進められる設計としています。

槇:戦略策定フェーズでは、「味ぽん」メンバーが戦略策定にあたる様子を他のメンバーにも共有。課題の整理やターゲット顧客の設定、インサイトの把握、UAVの開発と進め、多いときには約100人が見守るなか、UAVフレームワークの使い方やそのポイントを共有し、実践的な学びへとつなげました。

一方、策定した戦略を具体的なコミュニケーション戦略に落とし込むフェーズでは、「味ぽん」メンバーに対象を限定。施策の具体化はもちろん、Bloom&Co.のレクチャーやコーチングを通じて、より個人にフォーカスしてスキル獲得や成長を促しました。

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マーケティング戦略人材・組織強化プログラム「ブランドマーケティングコーチ」とは


グローバル企業やスタートアップ、一部上場企業まで、100社以上に対して、顧客理解に基づくマーケティング戦略策定と実行支援にあたってきた実績と、ミツカンとの協働から得た知見を踏まえ、株式会社Bloom&Co.が立ち上げた新サービスです。

「ブランドマーケティングコーチ」は、マーケティング人材と組織の強化を目的とし、自社でブランドマーケティング戦略を策定し、運用する力を身に着けるためのプログラムを提供しています。

戦略策定から戦略実行まで一連の実践にP&G出身のディレクタークラスのメンバーが伴走することによって、チームにマーケティング思考を根付かせ「わかる」から「できる」へと変化を促し、短期間で組織に変革をもたらします。

<本プログラムの導入効果>
・短期的効果:売上・シェアの向上、強い商品コンセプトの開発
・中期的効果:ブランド戦略立案力の向上、部門間連携の強化
・長期的効果:ブランド力の強化、組織のマーケティング力の強化

詳細を知りたい方は、以下のプレスリリースをご覧ください。
ブランドマーケティング戦略人材・組織強化プログラム「ブランドマーケティングコーチ」を開始November 14, 2024

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組織の力を引き出した「共通言語」の構築

彌野:戦略策定の過程を他ブランドメンバーに共有し、調査設計やインサイト理解の要諦を学んでもらうことで、組織全体のマーケティングリテラシーを一気に高めることができたのが、今回の取り組みのポイントの一つでしたね。

一連の取り組みを経て、組織にどんな変化が見られましたか。

槇:UAVという共通のフレームワークを全体に共有できたことで、技術サイドと企画サイドの連携や意思疎通が非常にスムーズになりました。

例えば、技術開発や広告宣伝の担当者も、「この商品のUAVは?」と、ブランドチームと同じ目線で、UAVを軸にやりとりできるようになりました。以前は、管理職レイヤーが、各チームの意見をとりまとめることがありましたが、今では全員が顧客を中心に据え、UAVという共通言語で話し合うことで、議論の質が高まり協力関係が築きやすくなったと感じます。

また、戦略策定の様子を見学していた技術開発のあるメンバーから、UAV視点の商品企画のアイデアが持ち込まれるといった嬉しい出来事もありました。その提案はとても理にかなった内容で、2024年の夏、実際に商品化に至っています。

彌野:「ブランドマーケティングコーチ」は、商品企画や営業など、さまざまな部署を巻き込み、組織変革へと導くのが特徴です。しかもプログラムは一律ではなく、企業ごとに、事業の進め方や商材に合わせ最適化した内容を提供しています。

UAVやブランドマーケティングの考え方を組織に浸透させることは、新たな価値創出の原動力となります。技術開発のメンバーがUAVの視点から商品企画を提案し、それが実際に商品化されたミツカンの事例は、その好例でしょう。

マーケティング人材の育成と、売り上げ増を同時に達成

槇:メンバーに成長機会を提供できたのも良かった点です。マーケティングに携わる人材といっても、戦略を得意とする人、企画やクリエイティブに強い人、プロジェクトを管理し実行に移すのが得意な人など、それぞれに持ち味があり得意な領域は異なります。

特に戦略策定の場面で顕著でしたが、個々の素養や強みを把握し、それに応じた働きかけをすることで、担当者が目に見えて成長している手応えを持ちました。

当社には個人の成長を人事評価に反映する仕組みが整備されています。その仕組みに加え、適性の見極めや教育機会の提供を両輪とすることで、人材育成の好循環を生み出すきっかけ作りができたと思います。

彌野:素晴らしいですね。

戦略策定をリードできる人材の育成は、多くの企業が直面している課題であり、「ブランド戦略を作れる人材が社内にいない」「誰に適性があるのか見極められない」といった悩みの声をよく耳にします。

そこで私たちは、独自のマーケティング戦略思考アセスメントツールを活用し、マーケティング戦略策定を担うために必要なスキルを持つ人材を客観的に評価し、マーケティング人材としての適性を見極めるサービスを提供しています。このサービスにより、短期間での人材育成を可能にしている点も「ブランドマーケティングコーチ」の強みです。

マーケティング人材や組織を強化することで、ミツカンでは具体的にどのような成果を実現できていますか。

槇:24年5月から、策定した戦略に沿って発売60周年を迎えた「味ぽん」のキャンペーンを実施したところ、値上げがあったにもかかわらず、前年比で売り上げが10%伸びました。また、マーケットシェアも向上しています。

UAV策定の前後で、大きく変わったのはメディアの活用方法です。ペイドメディアの比率が減り、UAVを口コミやソーシャルメディアで広める活動が増えました。お客様を起点とした話題づくりができるようになり、それが業績面にも良い影響をもたらしています。

強いブランドへと導く「ブランドマーケティングコーチ」の力

彌野:UAVという新しい考え方やフレームワークを導入したことで、マーケティングに対するアプローチにも何か変化はありましたか。

槇:ミツカンは「買う身になって まごころこめて よい品を」という顧客志向の企業理念を掲げて事業運営を行っており、UAVマーケティングとは、もともと相性が良く、とてもスムーズに受け入れることができたと思います。

ただ、具体的にコミュニケーション施策を固める際、ブランドの“ど真ん中”であるUAVを柱に据えることに当初、戸惑っている様子が見受けられました。これまでの我々のコミュニケーションでは、目新しさやインパクトを重視する傾向があり、今回UAVで導き出ししたUAVが”ど真ん中”過ぎて、自分たちには当たり前で新しさに欠ける感覚があり、効果が薄いのではないかと、自信を持てなかったのです。

しかし、一連のプロセスや、成功体験を通じて、「正しいものは正しい」という確信を持ってUAVに基づいた選択を行えるようになりました。これも成果の一つで、ブランドとしての一貫性をより高め、効果的なコミュニケーションを行っていく上で、重要な転機になったと思います。

彌野:マーケティング担当者は「何か新しいことをしなければ」と考えがちですが、目新しさばかりを追い求めると、ブランドの核からずれたコミュニケーションが増え、ブランドとして一貫性が損なわれ、顧客に正しく本来のブランド価値を伝えることが難しくなってしまいますよね。

Appleやコカ・コーラのようなロングセラーブランドは、常にブランドの核を守りながら、一貫性のあるブランドコミュニケーションを実現しています。これは、まさに“ど真ん中”のUAVを訴求するブランドマーケティングを徹底しているからでしょう。

そうした一貫性を持ち、長く選ばれるブランドを築くのに役立つのが、UAVのフレームワークです。そして、このフレームワークを基軸に、組織や人材が自ら考え、自走できる体制を構築することが「ブランドマーケティングコーチ」の役割です。

今回のミツカンとの取り組みでは、「ブランドマーケティングコーチ」のサービスで、短期的なビジネス成果だけでなく、中長期的な目線での人材や組織面での成長も実現することができました。今後、よりよい支援を行えるよう我々のサービスもお客様の声を元に進化させ続け、ご支援先のマーケティング人材・組織強化のお手伝いをできればと思っています。

最後に、マーケティング戦略や組織づくりについて、槇さんの今後の展望をお聞かせください。

槇:顧客志向のマーケティングを徹底し、ヒット商品を生み出すだけでなく、ヒットメーカーを次々と輩出できる組織の構築を目指したいと考えています。

現在の市場環境は厳しい部分もありますが、成長の可能性を見極め、中心的なブランドへの投資を続けることで、新たなチャンスを創出できると信じています。顧客志向を極めることで、既存のブランドだけでは補いきれないニーズが見えてくることもあるはずです。その場合、新規事業として新たな価値を創出する取り組みも視野に入れています。

ヒットメーカーを育てるということは、既存の商品を磨き上げる力と、新しい価値を創造する力の両方を持つ人材を育成するということです。この二つは、まさに経営に求められる力であり、マーケティング部門から次世代の経営人材を積極的に輩出していきたいと考えています。

彌野:槇さんの時代を先取りした視点には、いつも刺激を受けています。本日も、示唆に富むお話をありがとうございました。

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